文字,発音,音節,アクセント

アルファヴィト

1. 現代ギリシャ語の字母(アルファヴィト αλφάβητο)は次の24字である。
名称
Ααάλφα [álfa]
Βββήτα [víta]
Γγγάμα [γáma]
Δδδέλτα [ðélta]
Εεέψιλον [épsilon]
Ζζζήτα [zíta]
Ηηήτα [íta]
Θθθήτα [θíta]
名称
Ιιγιώτα [γjóta]
Κκκάππα [kápa]
Λλλάμδα [lámða]
Μμμι [mi]
Νννι [ni]
Ξξξι [ksi]
Οοόμικρον [ómikron]
Πππι [pi]
名称
Ρρρο [ro]
Σσ, ςσίγμα [síγma]
Ττταυ [taf]
Υυύψιλον [ípsilon]
Φφφι [fi]
Χχχι [çi]
Ψψψι [psi]
Ωωωμέγα [oméga]
a. Σ の小文字には2種類あるが,ς は語末のみで用い,その他の場合は σ を用いる: σώμα, μουσική, καλός

綴り字と発音

母音

2. 母音字 --- 母音(φωνήεν 複 φωνήεντα)を表す文字は α, ε, η, ι, ο, υ, ω の7個である。これらの文字は単独または2個組で用いられて,日本語の「アイウエオ」にほぼ対応する5つの母音を表す。
α ι, η, υ, ει, οι, υι ου ε, αι ο, ω
[a][i][u][e][o]
a. 母音 [u] は,日本語の「ウ」よりも口を狭くして鋭く明瞭に発音する。日本語には子音直後の語末または子音と子音の間の [u] が脱落する傾向があるので,そのような場合には特に意識して強く発音する必要がある。たとえば,σου は「ス」ではなく「スゥ」と言うような気持ちで発音するとよい。
b. ει, οι, υι, ου, αι へのアクセント記号(τόνος)は,εί, οί, υί, ού, αί のように2番目の文字の上に書く。
3. 母音の長短 --- 古代ギリシャ語や日本語の場合と異なり,母音に長短の区別はない。アクセントの置かれた母音が自然に長く発音されることはあるが,語義や綴り字とは無関係である。

半母音

4. 母音字 ι, υ, ει, οι, υι は,次に母音字が続く場合,しばしば半母音(μισόφωνο)として発音される(発音記号は [j])。すなわち,ια, ιου, ιε, ιο は「ヤ,ユ,イェ,ヨ」のように発音されることがある。
a. アクセントのある母音字は,常に普通の母音として発音される: θείος, κρύος
b. 母音字と母音字の組み合わせが複合語の2つの部分にまたがる場合,それぞれの母音字は普通の母音として発音される: διεθνής (δι-εθνής)
c. それ以外の場合には,母音字 ι, υ, ει, οι が独立の母音として発音されるか半母音として発音されるかを決定する一般的な規則はない。歴史的には,これらの母音字は本来独立の母音として発音されていたものが,次第に半母音化したものである。この現象をギリシャ語学では συνίζηση (動詞は συνιζάνω) と呼ぶ。現在も進行中の現象であり,話者の年齢や出身地などによって影響の度合いはかなり変化する。文章語・専門語よりも日常語の方が συνίζηση を起こしやすいという傾向がある: καρδιά [karðjá], καρδιολόγος [karðiolóγos]
d. 現代希希辞典の1つ ΝΕΟ ΕΛΛΗΝΙΚΟ ΛΕΞΙΚΟ は,συνίζηση を起こすかどうか曖昧な見出し語に対して,ασυνίζ. (ασυνίζητο 半母音化しない),συνιζ. (συνισμένο 半母音化する)と注記している: ήλιος (συνιζ.), μόριο (ασυνίζ.), μυαλό (συνιζ.), σκιά (ασυνίζ.), ιατρείο (ασυνίζ.), αδειάζω (συνιζ.), μειώνω (ασυνίζ.)
e. いくつかの語は συνίζηση を起こすかどうかで文法的・意味的違いを生じる: άδεια [áðja] (形容詞「空の」), άδεια [áðia] (名詞「許可」), σκιάζω, [skjázo] (「おどかす」単純過去 έσκιασα), σκιάζω [skiázo] (「影を落す」単純過去 σκίασα), ακρίβεια [akrívja] (「値段が高いこと」), ακρίβεια [akrívia] (「正確であること」)
5. ου は,次に母音字が続く場合,半母音[w]として発音される。ただし,アクセントのある ού は普通の母音として発音される: ουίσκι [wíski], ακούει [akúi]

子音

6. 子音字 --- 子音(σύμφωνο 複 σύμφωνα)は,次のように単独または2個組の子音字によって表される。
無声音 有声音
綴り字音価綴り字音価
κ[k]γκ[g]
χ[x],[ç]γ[γ]
π[p]μπ[b]
φ[f]β[v]
τ[t]ντ[d]
θ[θ]δ[ð]
σ[s]ζ[z]
τσ[ts]τζ[dz]
(有声音)
綴り字音価
μ[m]
ν[n]
λ[l]
ρ[r]
複子音
綴り字音価
ξ[ks]
ψ[ps]
a. χ, γ --- 舌の奥の部分と上あごの間で出す無声摩擦音が [x] 音で,ドイツの音楽家 Bach の ch の音に近似する。これが χ の基本的な発音であるが,母音 [i] または [e] の前では摩擦音を出す位置が舌先に移動して [ç] という音になる。これは,日本語の「ヒ」「ヒェ」に近い音である。γ は χ と同様の口の形で出す有声摩擦音である。日本語のガ行の子音 [g] との違いに注意すること。また,直後に母音 [i] または [e] が来ると,χ の場合と同様に摩擦音が変化して γι, γε が日本語の「イ」「イェ」に近い音として発音されるようになる。[i], [je] とは区別しなければならないが,特に語頭では区別しにくい。
b. φ, β --- それぞれ英語の f, v に相当する。下唇と上の歯の間で摩擦音を出す。
c. θ, δ --- θ は英語の theater の th に,δ は英語の that の th に相当する音。舌の先端と上の歯の間で摩擦音を出す。
d. σ --- 日本語のサ行の子音に相当する。ただし σι は日本語の「シ」ではなく,「スィ」と言う気持ちで発音する。
e. ζ, τζ --- ζ は σ を有声にしたもので,舌先を歯茎につけずに発音する(英語の zoo の z 音)。τζ は τσ を有声にしたもので「ツ」の口の形のまま有声で発音する(英語の buds の ds 音)。英語の jump の j の音にならないように注意する。
f. εκ と σ で始まる語から構成される複合語 εκστρατεία, εκσυγχρονισμός などは,κσ を ξ と書かない。
7. σ は,有声子音の直前では通常 [z] と発音する。ただし,λ の直前では通常 [s] と発音する: καλεσμένος [kalezménos], σβήνω [zvíno], Ισραήλ [izraíl], ισλαμισμός [islamizmós]
8. 語中の γγ, γκ, γχ は,それぞれ [ŋg], [ŋg], [ŋx] のように,鼻音 [ŋ] を加えて発音する。鼻音とは,日本語の「タンゴ」の「ン」の部分の音である: αγγίζω [aŋgízo], ανάγκη [anáŋgi], άγχος [áŋxos]
a. 語中の γκτ は [ŋkt] と発音され,時に [k] が脱落する: ελεγκτικός [eleŋktikós], Ουάσιγκτον [wásiŋton]
b. 語中の γγ は,通常 [ŋg],すなわち,語中の γκ と同様に発音される。ただし,γ で始まる語から形成された複合語は [ŋγ] と発音されることもある: συγγραφέας [siŋγraféas], έγγαμος [éŋγamos] < εν + γάμος
c. 外来語の中には,語中の γκ を単独の [g] で発音するものもある: μπαγκέτα [bagéta]
d. 文語体の名詞語尾に現れる γξ も [ŋgs] のように鼻音化して発音される: φάλαγξ [fálaŋgs]
9. 語中の μπ, ντ は,それぞれ [mb], [nd] と発音される: έμπορος [émboros], πέντε [pénde]
a. 語中の μπτ は [mpt] と発音され,しばしば [p] が脱落する: Πέμπτη [pém(p)ti]
b. 外来語においては,語中の μπ が [b] あるいは [mp] と,語中の ντ が [d] あるいは [nt] と発音されることもある: ταμπού [tabú], σαμπουάν [sampwán], τζούντο [tzúdo]
10. αυ, ευ は,母音および有声子音の前で [av], [ev] と発音され,無声子音の前で [af], [ef] と発音される: αύριο [ávrio], παύω [pávo], αυτός [aftós], δουλεύω [ðulévo], εύκολος [éfkolos]
a. αύ, εύ は,α, ε の上にアクセントを置いて発音されるが,アクセント記号は υ の上に記される。これは,本来 αυ, ευ が二重母音 [au], [eu] であったという歴史的経緯によるものである。
b. β, φ の直前の αυ, ευ の υ は発音されない: Εύβοια [évia], εύφορος [éforos]
11. 同一の子音字2個の組み合わせのうち κκ, ππ, ββ, ττ, σσ, μμ, νν, λλ は,単独の子音字 κ, π, β, τ, σ, μ, ν, λ とまったく同様に発音される。
a. たとえば,ήττα と ήτα ([íta]),τόνος と τόννος ([tónos]),κόμμα と κώμα ([kóma]),πολύ と πολλοί ([polí])は,発音の上からは区別できない。κόμμα を「コンマ」,τόννος を「トンノス」と読まないように注意すること。